おうち時間が増えた昨今、家づくりでは、「無添加住宅」という言葉が注目を浴びています。
化学物質を抑えた建材選びで、末長く、健康的に住むことができる住まいを目指すというのが特徴ですが、実際のところ、どんなメリット・デメリットがあるか気になりますよね。
今回はそんな「無添加住宅」について、実際にどこまで化学物質を排除すべき? 予算感は? 向いている人、向かない人のタイプは? など、気になるポイントを解説していきます。
体に悪いものは使わない「無添加住宅」の特徴
シックハウス症候群の存在が明らかになり、せっかく手に入れたマイホームが家族の健康に影響を与える場合もあるということが認知された今、さらに一歩踏み込んだ家づくりが注目されています。
それが、健康を害する可能性のある化学物質の使用を極力抑えた「無添加住宅」という考え方。漆喰(しっくい)やコルク、米のりといった建材を使い、天然素材特有の空気の清浄や調湿、断熱といった面でも調和の取れた、快適な住まいを目指します。
どこまで徹底する?「無添加住宅」の予算感と取り入れ方
「無添加住宅」の予算感は、おおよそ坪55〜80万円くらい。一般的な大手のローコスト住宅に比べると初期費用は高めですが、将来的なメンテナンス費用を抑えられるというメリットもあるため、将来のコストまでをトータルで考えて検討するのも良いと思います。
また、一口に「無添加住宅」といっても建材にはグレードがあり、全ての化学物質を排除しようとすれば、どうしても高価なものになってしまうのは避けられません。すでに化学物質過敏症などを発症している人の場合は、徹底的に化学物質を排除するのがベストですが、実際にそこまでのレベルになると、建材の化学物質以上に、家具についている化学物質も排除していく必要があります。
特に体質的なトラブルを発症していない場合は、予算とのバランスを考慮しつつ、住宅の一部に無添加素材を取り入れられるお客様が多いです。
ですから、「アレルギーを抱える家族が安心して住める家にしたい」のか、「肌に触れる部分の建材だけは無添加にしたい」「今のところ症状は出ていないから、予算が許す限り、無添加の素材を取り入れたい」のか、具体的なゴールを定めてから検討してみてください。
メリット?デメリット?「無添加住宅」に向いている人
では、「無添加住宅」のメリットやデメリットは?というと、実は、住む人の感じ方によって印象が変わってきます。なぜなら、無添加住宅とは、言い換えてみれば「経年変化を楽しむ家」ともいえるからです。例えば、長年愛用した本革の財布に独特な風合いが生まれて、余計に愛着が沸くように、漆喰や天然石、無垢(むく)の床材も時とともに風合いが変わっていきます。
天然素材を使うことでメンテナンス費用が抑えられるともいわれていますが、「新品のようなキレイな状態」を保とうとすると、やはり定期的なメンテナンスが必要な場合も。メンテナンスをする場合、一般的な建材に比べ、建材自体や施工費がかかる場合もあるので、「常に新品のような美しさを保ちたい」という人には不向き。使いこむことで生まれる素材の変化や、自ら補修すること自体を楽しめる人は「無添加住宅」に向いているといえるでしょう。
「無添加住宅」の代表的な素材の特徴をチェック!
では、「無添加住宅」の建材はどんなメリットがあり、どんな変化があるのか、代表的な建材の特徴をチェックしてみましょう。
外壁にも内壁にも使える「漆喰」
昔ながらの塗り壁技法を使う漆喰は、外壁にも内壁にも使えます。凛とした白さが印象的で、強度はもちろん、「燃えない」「水に強い」という特徴のほか、表面に無数の穴が空いている「多孔質(たこうしつ)」と呼ばれる性質から、夏場は湿気、冬場は結露を軽減する「調湿効果」にも優れています。
また、漆喰を使った家は「入った時の空気感が違う」ともよくいわれます。それは漆喰の「消臭効果」のおかげ。さらに壁自体に汚れがつきにくい「防汚効果」、空気中の細菌の増殖を抑える「抗菌効果」までそろう優等生ぶりです。
そんなメリットの多い漆喰ですが、硬化する塗り壁全般に起こる「ひび割れ」の可能性は知っておきましょう。自分たちでこまめに補修が可能ですが、補修跡はどうしても残りがち。
また汚れが気になる場所は、消しゴムを使ったり、削ったりして美しさを保ちます。防汚効果があるとはいえ、純白の外壁は汚れが目立ちやすいもの。気になる人は、さらに汚れにくくする加工をプラスしたり、メンテナンスの時期を検討したりしておく必要もあります。
ずっと触れていたくなる肌触りの「無垢材」
木の温もりを常に感じられる無垢材は、無添加建材の中でも人気の床材です。「無垢材」と聞くとおしなべて「高価」というイメージを持たれがちですが、例えば、アトリエプラスでよく選ばれるナラの無垢材に比べると、床暖房対応の合板フローリングの方が高価という場合も。
床暖房には対応できませんが、無垢材はそのままで、冬場でも足がすくむような冷たさがなく、木の種類によって異なる肌触りを楽しむこともできます。木目も当然一つとして同じものがなく、新品の美しさはもちろん、使い込むほどに味わいのある色へと変化していくのも特徴です。
一方で表面が加工されていない無垢の床は汚れや傷がつきやすいのがデメリット。傷も含めて味わいと感じられるかどうかがポイントです。
リサイクル素材でもある「炭化コルク」
軽量で断熱効果に優れていることから、宇宙船にも使われているという「炭化コルク」。端材を加工するためエコな素材でもあり、吸湿性に優れていることから壁内結露を抑える効果も得られます。また天然の防虫成分「スベリン」を含み、吸音材としても優秀。一方で一般的なグラスウールなどの断熱材に比べると、やはりコストがかかるのがデメリットです。
「天然石」は夢のノーメンテ素材?
木造建築がメジャーな日本において、「石」は建材としてあまりピンと来ない人もいるかもしれません。でも「天然石」は実に優秀な建材の一つです。耐水・耐火・耐熱に優れ、劣化しにくく、いつまでも重刻で表情豊かな見た目を保ってくれます。
もし立地条件によってコケなどが生えたとしても、どこか独特の味わいに感じられるのも特徴。基本的に再塗装などのメンテナンスは不要で、壁材はもちろん、屋根材としても選ばれています。
デメリットとしては、素材や施工のコストがかかることと、重量があるため、必要な壁量が多くなり、間取りに制限が出る可能性があること。とはいえ、耐震性能を低下させない構造は十分に可能ですので、設計士とよく相談をしてみてくださいね。
日本人に馴染み深い米でつくる「米のり」
シックハウス症候群の主な原因としてあげられるのが、化学物質を含む接着剤。これに替わるものとして使用されているのが「米のり」です。古くは奈良時代から、家具や建具などの木製品に使用されてきたとされ、木との相性はバツグン。湿度が高いと膨らみ、乾燥すると収縮する木材と同じように、「米のり」も伸び縮みするので、剥がれにくくなるのが特徴です。
化学合成接着剤に比べコストはかかりますが、寿命は長く、なんと100年以上も保つといわれており、メンテナンス費用を抑えられるのも魅力です。ただし、水がかかると剥がれやすくなる点、そして接着するまでに1日以上と時間を要するのがデメリットといえます。
いかがでしたでしょうか。
自然の素材に囲まれる住まいというのは、想像以上に心地良く、心穏やかに過ごせるもの。まずはその安らぎを体感するために、新築住宅の見学会などに参加してみるのも良いですよ。
フルオーダーで住まいをつくるアトリエプラスでは、どんな建材でもお望み通り、取り入れることができます。どこに、何を、どの程度取り入れるのか、そしてその素材に見合った強度のある構造まで、しっかりとご提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。